2019年8月31日掲載 / 2020年1月12日更新
目次
慢性肝炎について
症状
検査
予後
治療
歯科治療時の注意点
慢性肝炎について
慢性肝炎は6ヵ月以上肝臓に炎症が持続あるいは持続していると思われる病態で、組織学的に肝細胞壊死やグリソン鞘の線維増生などがみられるのが特徴です。
国内の慢性肝炎はC型肝炎ウイルスが原因のものが最も多く、次にB型肝炎ウイルスが原因のものが多いです(90%がC型・B型ウイルスの感染が原因)。
B型肝炎ウイルスによる慢性感染のほとんどは、2〜3歳までの乳幼児期にHBe抗原(こうげん)陽性の母親から感染を受けています(母子感染)。
しかし近年では、B型肝炎ウイルスによる母子感染はほとんどなくなってきており、キャリア数も減少しています。
そのため、外来で診察するウイルス性慢性肝炎のほとんどがC型慢性肝炎です。
C型肝炎ウイルスの母子感染はそれほど多くなく、無症候性キャリアの人もいます。
C型肝炎ウイルスはインフルエンザウイルスと同じように、ウイルスの性質が次々と変わってしまうため、ウイルスに有効な抗体が出来にくい状態になっています。
この性質によって、C型肝炎ウイルスは持続的に肝細胞を破壊し慢性肝炎を引き起こすと考えられています。
C・B型肝炎ウイルスキャリアの歯科診療時には、歯科従事者が患者から針刺し事故等で感染しないように注意が必要です。
症状
慢性肝炎の多くは無症状でほとんど症状がありません。
長年経過すると疲れやすい、だるい、食欲不振などの症状が出ることもありますが、血液検査などを行って慢性肝炎と初めてわかることが多いです。
慢性肝炎が進行して肝硬変になると、手掌紅班やクモ状血管腫が認められることがあります。
検査
血液検査にてウイルスマーカーが陽性で、6か月以上GOT、GPT値が基準値以上の値を示せば慢性肝炎と考えられます。
なお、GOT、GPT値などの血液検査値の結果は肝炎の活動性が低い時や肝硬変に近づくと正常範囲内のこともあります。
また、慢性化によって免疫グロブリンの上昇が生じて、IgGが増加します。
最終的には肝生検を行ない、慢性肝炎の進行状況を調べます。
予後
慢性肝炎が進行すると肝硬変や肝癌になることがあります。
そのため定期的な専門医の診察と検査が必要です。
なお、飲酒は肝炎を悪化させるリスクが高いので注意が必要です。
治療
C・B型慢性肝炎はウイルス感染が原因のため、ウイルス排除を目的とした抗ウイルス薬であるインターフェロン治療が一般的です。
国内ではB型慢性肝炎の保険治療でインターフェロンの連続使用が6か月間認められるようになりました。
一方、C型慢性肝炎のインターフェロン治療は、保険診療上連続使用が認められています。
歯科治療時の注意点
肝疾患を患っている患者数の多さから、歯科診療を行う患者の中にも肝疾患を持っている可能性を考える必要があります。
慢性肝炎が進み肝硬変となると手掌紅班やクモ状血管腫が認められたり、また急性肝炎の場合は皮膚や眼球結膜の黄染が認められます。
そのため、歯科従事者は患者にこのような所見がないかを確認する習慣を身に付ける必要があります。
なお、治療をする際に最も注意すべきがウイルス性肝炎で、C・B型肝炎ウイルスは血液から感染するので、歯科従事者だけでなく歯科診療行為によって他の患者へ感染する可能性もあります。
使用した器具の取り扱い・消毒は徹底させるべきです。
また、感染予防として血液の付いた鋭利な器具や針を誤って自分に刺さないように細心の注意を払い、もし刺してしまった時は患部から血を絞り出すようにして流水にてしっかり洗います。
そして、感染が疑われる場合は採血や治療が必要なことがあります。
なお、針刺し事故防止として針のリキャップは基本的に行わないようにします。
また、肝疾患を患っている患者の治療で注意すべきなのが出血傾向についてです。
肝疾患が進行すると血小板減少による出血傾向を合併していることがあり、その際は、抜歯などの観血的治療でなかなか出血が止まらないことがあります。
そうならないようにするため、かかりつけ内科に対診をまず行うべきでしょう。
この記事のまとめ
ウイルス性肝炎の感染経路は血液感染のため、歯科診療時に医療従事者だけでなく他の患者への感染の可能性も考えられます。器具の取り扱いや消毒には十分注意しましょう。また、重度の肝疾患では止血困難な場合がありますので、治療開始前にかかりつけ医に対診すると良いでしょう。
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