2019年10月7日掲載 / 2020年6月20日更新
インプラント手術の全身的トラブル
手術中に急性発作または全身状態悪化を生じる可能性がある疾患には以下のものがあります。
高血圧症
虚血性心疾患
⇒ 手術時に良好にコントロールされている場合でも、発作時の対応について十分に準備しておきましょう。
糖尿病
⇒ 糖尿病のコントロールとしては、HbA1c : 6.9 %以下、空腹時血糖値140 ml/dl以下、ケトン体 (-)程度であれば手術可能です。
脳血管障害
甲状腺機能亢進症
そのため、患者の全身状態はかかりつけ医との対診によって正確に把握する必要があります。
なお、緊急時にはバイタルサイン測定、気道確保、必要な投薬をしながら迅速な救急搬送を行います。
インプラント手術の局所的トラブル
@ インプラント体の初期固定不良
インプラント体を埋入するための埋入窩が大きくなりすぎると、
初期固定が不良(動揺する)となります。
骨が弱くて薄いところでは、埋入窩を形成する時に、
低回転でドリリングする事で、過剰な骨切削を予防することができます。
また、埋入窩が予定よりも大きくなりすぎた場合、
少し大きいインプラント体を埋入することで、
良好な初期固定が得られることがあります。
A インプラント体の埋入位置の不良
インプラント体埋入時に位置不良を起こすリスクがあります。
その原因は埋入窩が浅すぎたり深すぎる、
インプラント体の偏位や傾斜などがあります。
埋入位置が不良だと、上部構造を取り付けた時に、
周りの歯と上手く調和することなく審美障害となります。
B 隣接歯の歯根損傷
インプラント体埋入時に、隣の歯が曲がっていたり、
埋入方向が間違っていたりすると隣接歯を損傷することがあります。
損傷した歯が生活歯の場合は、根管治療が必要となることがあります。
正確な埋入位置・方向にインプラント体を埋入する為に、
診断用ステントなどの使用が重要となります。
C 下顎管の損傷に伴う知覚鈍麻
下顎臼歯部のインプラント体埋入時に
下顎管(下顎骨内部の血管・神経束)を損傷して知覚障害が生じることがあります。
下顎の骨質が軟らかかったり、
歯槽骨頂から下顎管までの距離が短いと下顎管損傷リスクが高まります。
知覚障害では下唇およびオトガイ部の知覚鈍麻(しびれ)が生じます。
術前のCT撮影で下顎管の位置・走行を正確に把握して、
神経まで十分な距離があるインプラント体を選ぶことが予防につながります。
D 上顎洞への迷入
上顎臼歯部のインプラント体埋入時に、
上顎洞内部へインプラント体が入りこんでしまうことがあります。
埋入時にインプラント体を上顎洞方向へ押し込むような力をかけてしまうと迷入リスクが高まります。
また、初期固定が不良の場合は、
患者さんの吸気やインプラント体への処置によっても上顎洞へ迷入することがあります。
術前のCT撮影で上顎洞底の位置を正確に把握することが予防につながります。
E 骨折
インプラント体埋入によって骨折することがあります。
骨折は埋入時よりは、埋入後数日で生じることが多いです。
インプラント体の初期固定を得るために、
小さめの埋入窩に対して無理やりインプラント体を埋入することが原因です。
F 異常出血
インプラント体埋入時にドリルの先端によって
オトガイ下動脈または舌下動脈を損傷すると口底出血が生じるリスクがあります。
術前のCT撮影によって、入念な埋入シミュレーションを行うことが予防につながります。
この記事のまとめ
インプラント手術では全身的・局所的トラブルが生じるリスクがあります。インプラント治療のメリットだけではなく、生じうるリスクについても事前に確認しておきましょう。
人工の歯根と歯冠による補綴
インプラントとは歯が抜けてしまった時に、抜けた歯の代わりとして人工の歯根を埋め込み、その歯根の上に人工の歯冠を取り付けることで、失った歯を取り戻すという治療です。
現在のところ保険治療はなく完全に自費診療となっています。
詳しくはこちらから。
インプラントも歯周病になります!!
インプラントはチタンという金属で作られているため虫歯になることはありません。
しかし、天然歯の清掃が不十分だと歯周病になるように、インプラント周囲の清掃を怠っていると歯周病になってしまう可能性があります。
そして、歯周病になってしまった場合は天然歯のものと比べると治療困難となることが多いです
続きはこちらから。